愛のかたまり

 やがて笑いがおさまると、彼女は気が抜けたように言った。

「なんだ、あなたは見つけたのね」

 海さんは奇妙にあまい表情のまま、うなずいた。

 その人は、今度はしっかりとあたしの方に向き直り、試すように不躾に眺めた。

 心臓がばくばくいって今にも気が遠くなりそうだったけれど、精一杯の意地で見つめ返した。

 白く血の気のない手が頬に伸びてきて、あたしはきつく目を瞑り歯を食いしばった。

 だけどいつまでたっても痛みは襲ってこず、かわりにやわらかくて意外にもあたたかな手がそっとあてられる。

 細い指が、細かく震えていた。

「かわいい仔猫ね」

 彼女は濃淡のない表情に戻り、「ふたりでおままごとやってるといいわ」と冷たく言い放つと背を向けた。
 
 よろけながら遠ざかる後姿は変にちいさかった。