愛のかたまり

 海さんの表情は見えないけれど、背中からは悲しみが滲みだしている。

 かたまったふたりの間をとても密度の濃い時間が流れ、それはあたしを取り残したまま永遠に続きそうかに思われた。

 均衡を破ったのは、闖入者のほうだった。

「またアル中女がやってきたって・・・・・・そう思ってるのね」彼女は皮肉っぽい口調で言った。

 海さんはだまったままでいる。

「なんだか妙に元気そうじゃない、男でもできた?」

 低く、神経にさわる笑い声。次の瞬間、ヒステリックな声が吐き出される。

「ばかみたい! ほんっとばかみたい。何よ、その格好。いつまでこんなこと続けるつもり? えーえー、私が悪いわよ。何もかも全部私のせいよ。わかってるわよ、そんなこと。あの子が死んだのは・・・・・・私だって・・・・・・悔やんでも悔やみきれないのに!」