数日が何事も起こらずに過ぎていった。

 あたしは、あまやかな日常というものにどっぷりと浸かっていた。壊れた蛇口のように、いつまでも音をたててぬるま湯の幸せが垂れ流される。

 ふたりはいつも小鳥のように寄り添って過ごした。

 水槽の寝室。

「おやすみ」と「おはよう」

 夕暮れの光に溶けていく海さんの後姿を見送るときのちょっとした淋しさ。

「ただいま」と「おかえりなさい」

 朝の光を含んではらむカーテン。

 ミュウ、とあたしを呼ぶあまい声。