愛のかたまり

 最低だ。

 悲しくもないのに自由に涙を流す女の冷たい血が、あたしの身体にも廻っていると思うと堪らない。

 この場から逃げ出してしまいたいぐらいに恥ずかしい。

 もう一瞬たりともこの女のそばにいて平気でいられる自信はない。

 同じ空気を吸うのが嫌だ、同じ空間にいることが苦痛だ。

 あたしは叫びだしたいのを必死でこらえつづけた。

 ママの大人な嘘が、暗闇の中に立ち止まるあたしの前から細い、頼りないぐらいに細い光の方向を奪いさった。