あきらかに彼女ははしゃいでいて、そのテンションの高さにはついていけそうになく押し黙っているしかなかったけれど、不思議なことに危機感とか違和感とかを感じることはなく、ただこうしていればいいというような根拠のない安心だけがあった。
それでもさすがに、このわけのわからない事態をなんとかしなければと思う気持ちはあって、覚悟を決めて大きく息を吸った。
途端に彼女はすっと大人の表情に戻り、口をはさむ隙すら見せずに言った。
「じゃ私、お仕事行ってくるわね。帰りはまた朝になるから眠って待ってなさい」
「あ・・・・・・」口をぱくぱくしてるあたしを尻目に、
「そうそう、私はうみ。海はひろいな大きーなーの海、ね」
じゃあね、と彼女はウインクひとつ残して、消えた。
