愛のかたまり

 夜中過ぎに携帯電話が鳴った。

 通話ボタンを押すとしばらくの沈黙の後に、「久しぶりー、元気ぃ?」

 妙にはしゃいだような、そのわりにあまり元気そうではない声が、言った。酔っているようだった。

「ちーちゃん?」あたしはねぼけ声で訊ねた。

 また、沈黙。

「・・・・・・どうしたの、またお酒いっぱい飲んでるでしょう? なんかあったの?」

 彼女は苦しい息を吐いて疲れたように言った。「ごめーん、用事はないんだけどね。ちょっと、美雨の声が聞きたくなってさぁ」

「ちーちゃん?」本格的に心配になってきた。

 それを察知したのか、ちーちゃんは話を切り上げるように笑って、からかうように言った。

「ほんとにごめんってば。私のかわいい妹ちゃん、あいしてる。きっと世界中でいちばん、あなたのこと好きだわ、誰よりも」

 悲しいような明るさに気づいてもよかったのに、思いがけないちーちゃんの言葉が嬉しすぎて、舞い上がって、この幸福な感じを消してしまわぬよう必死で・・・・・・全然頭がまわらなかった。

 翌日、もう生物でなくなってしまった彼女を発見したのはあたし自身だった。