愛のかたまり

 青いカーテンが開け放されると、窓の外はまだ蒼白い月が空に取り残された早い朝だった。

 海さんの凛とした横顔が、まだ弱い朝の光に透ける。消えてしまいそうに儚い横顔だった。

 あたしはその美しさにぼうっと見とれていた。そうして同時に彼女が幸福でないことを直感する。人の傷を癒そうと努力してくれる人は、たいてい自分も傷を負っている。

「気持ちのいい朝ねー。さて今日は何して過ごそうか?」淋しい顔のままでにっこりと笑う。

 海さんという人は、どこからどうみても完璧な大人の女性なんだけれど、どうかすると子どもみたいにイノセントだったりして、あたしは心配になったり愛しくなったりするんだ。