「なんでなんにも訊かないの?」

 同じ言葉は自分でも驚くほど素直に響き、続いて質問ばかりが溢れ出した。

「なんであたしのこと、拾ってくれたの? 路上で酔っ払って寝てる子どもなんてめちゃくちゃ厄介だよ。普通は放っておくよ。家出してきたんだってことだってわかってたでしょ。そんな子ひとりで家において出かけたりして不安とかなかったの?」

「私、昔から仔猫って放っとけないのよねえ」海さんははぐらかすように言って、喉の奥でくつくつ笑った。

 彼女には不似合いな、猫のキャラクターの描かれたカップ(すでにあたし専用になっている)を手渡してソファの隣に座ると、あたしの髪を高価な陶磁器にでも触れるように丁寧に撫でる。