相変わらず雨が細くやわらかな音を続け、夜が深かった。
ひとしきり細い腕の中で泣いて、顔を上げるともらい泣きしている海さんの顔があった。涙でぐしょぐしょの顔を見合わせて、ふたりで思わず笑ってしまう。
見も知らない、名前さえ知らないただの女の子のために泣いてくれるこの人こそ、本当のあたしを理解してくれる人かもしれないと思う。淋しいとか心細いとかつらいとか悲しいとかどうしようもない不安だとか。
すべての感情は解き放たれ、その人は全部をゆったりと受け止めた。
話さなくちゃ。伝えなくちゃ。焦れば焦るほど舌は凍り、言葉を覚えたての子どもみたいにやっと思いついたいくつかの単語を次々並べる。
「あたし、美雨。十四歳、中二・・・・・・家出娘」
少し間をおいて海さんは、「みうって・・・・・・どんな字?」とだけ訊いた。
「美しい雨って書くの」
綺麗な名前ねと言ったきり、海さんはそれ以上何も訊かない。
お茶を淹れなおしましょう、と言ってキッチンに向かい背を向けた。
ひとしきり細い腕の中で泣いて、顔を上げるともらい泣きしている海さんの顔があった。涙でぐしょぐしょの顔を見合わせて、ふたりで思わず笑ってしまう。
見も知らない、名前さえ知らないただの女の子のために泣いてくれるこの人こそ、本当のあたしを理解してくれる人かもしれないと思う。淋しいとか心細いとかつらいとか悲しいとかどうしようもない不安だとか。
すべての感情は解き放たれ、その人は全部をゆったりと受け止めた。
話さなくちゃ。伝えなくちゃ。焦れば焦るほど舌は凍り、言葉を覚えたての子どもみたいにやっと思いついたいくつかの単語を次々並べる。
「あたし、美雨。十四歳、中二・・・・・・家出娘」
少し間をおいて海さんは、「みうって・・・・・・どんな字?」とだけ訊いた。
「美しい雨って書くの」
綺麗な名前ねと言ったきり、海さんはそれ以上何も訊かない。
お茶を淹れなおしましょう、と言ってキッチンに向かい背を向けた。
