愛のかたまり

 また嘔吐感にも似たあの感覚が甦る。

 必死で先のことを考えようとしたけれど、しばらくしてもなんの考えも浮かばず、それどころかいつのまにかこの見知らぬ部屋に馴染んでしまっている自分に気づいて苦笑する。

 あたしの家に酷似した淋しげな部屋だが、一点だけ違うところがある。

 それはかすかに漂う温もりだ。
 
 薄皮一枚程度の違いかもしれないけれど、決定的だ。

 もう、この部屋を出るなんて考えられなかった。

 ここが、やっと見つけたあたしの本当の居場所のような気がしていた。

 不思議に居心地のいい、この世の果て。この部屋が住人に似ているとすれば、彼女のこともまた信用できると思う。