愛のかたまり

 昨日までの日々、あたしたちはそれぞれがぎりぎりのラインで幸福な家庭という幻想を演じつづけてきた。

 あたしはゆっくりと感情というものを忘れていき、上手に、いかにも幸せそのもので笑うことは得意だったけれど、泣くことがどうしてもできなくなった。

 何が起きても涙は出ない。

 何かのために泣くなんてバカなことはしない。誰かのために一喜一憂するなんて冗談じゃない。

 あたしはあたしのことだけを考え、他の何もあたしの中にはいれてやらない。