愛のかたまり

　あたしは中学生にして、日々の生活に疲れ果てていた。

　世間的に言えば文句ない家庭だ。パパはわりと大きな会社を経営していて、ママはたまにTVにも顔を出す売れっ子料理研究家。大きな家には何もかもが大仰に揃えられていたけれど、両親だけが欠けていた。

　ふたりともが、おそろしく忙しかったのだ。パパは家族よりも仕事をずっと愛していたし、ママの頭の中は常に新しいお料理のことでいっぱいだ。

　さらに致命的なことには、彼らは表面上仲の良い夫婦を演じていたが、実際のところは必要最小限の言葉しか交わさずできれば相手の顔さえ見たくないというような間柄だった。