愛のかたまり

 異様においしい卵粥をつくった女は本当に出かけてしまったらしい。

 どの部屋にも、誰もいない。

 リビングのソファの上にはあたしが着ていた服がきちんとたたまれて置かれていた。お腹もいっぱいになったし、いつでも出ていける状態だった。

 あたしは溜息をひとつ、吐いた。

 寝室のドアを開けると陽の光の勢いは格段に落ちて、室内を染める青が濃く深くなっていた。

 リビングから音楽が流れ込み、切り取られたように現実離れした空間の青にさわさわと心揺らしてひろがるピアノの歌声。

 綿の頭に映るヴィジョンは悲しくなるほどの青、取り残された熱帯魚たちの水槽。