逃げ場のないこの苦しくて切なくて罪悪感な気持ちに俺は膝を地面につけた
溢れ出す涙がただボロボロと零れ落ちて濡れた地面をより濡らした。
噛み締める下唇からは血がポタリ、と流れ出てきて痛みなんて今は全然わからない。
そんな状況なのに鳥肌を誘う冷たい風がなびいて髪が揺らぐ
それと同時に雨の向きが変わって顔に当たり、右目につけた包帯が脆くなってゆく

今にも取れそうで…

そう、この包帯も付けた理由が目を傷つけたから。
理由なんてそんなの…だけど本当は傷つけた理由もある
それは帽子屋とある日、喧嘩して俺が暴力を振るった。
振るうなんて度でもなかった、額に傷を作らせて首を絞めて殺そうとした。
それをヤマネが助けてくれたけど俺はただ怖かった

真っ赤な血のような色で染まる目はまるで化け物のようで…。

その時に代償として自ら目を傷つけて開かないようにした。
単なる現実から逃げたって話。

「大丈夫だから安心してくれ」

そう帽子屋に入れて俺はその甘い言葉に身を寄せてしまった
今回もそういってくれるだろう、馬鹿な期待をした俺に降り注いだのは



「最悪だよなぁ、こんなヤツを愛してたなんて…」

「代償として一緒にアリスと死んでくれよ、あの時の様に…」

「なぁ、三月兎?」



続けられた言葉を俺に死ね、という言葉で甘ったるい言葉なんて口にもしてくれなかった。
怖かった…死ねなんて周りから一度も言われた事なくて……しなきゃよかった。

後悔した時は既に遅く、茶色の髪が風によって揺らいで涙が飛ばされた

「ぼう…しや…」

俺が最後に発した言葉、それが俺にとって最後の最後の



アリスになる前の記憶だった。