それはとても偶然の様で運命の様でよくわからない事だった。
望んでもない事をされて、怖くて怖くて仕方がなかった。
だって、自分の手で殺した相手の姿だったから…

「アリ……ス……ッ?」

見えるのは白い布製の手袋をはめて青と白を使用したエプロンドレスに金色の綺麗な髪…
何度、硝子の破片で見ようとも目を瞑ろうとも変わらない…。
そこにいたのは俺であり、そして彼女(アリス)であった。
何のために、なんで自分だのか…

少し前のお話、こうなった理由に近いお話が。
本当はアリスがこの世界を救って無事帰るはずなのに、そうだったはずなのに…
俺はある思いでアリスを殺した。

三月兎の俺は大好きな人がいる。
かっこよくて、いつも優しくしてくれるその人が…
皆はその事を″溺愛″というのだというけれども俺の心は違うかった。
大好きだったんだ、その人自体が……。
好きっていうのは家族愛とか…そんなのじゃなくて…好きだったんだ…

なのに、アリスが現れてからあの人はアリスを好きになった。
溺愛とかじゃなくて…恋人とかそんな…物で

それで嫉妬して、大人げないのはわかってたけど独占したくて…
何したって振り向いてくれないあの人はアリスを引き留めようとした。
その時、殺意が湧いた…

本気で本気で…独占したくてたまらなかった。
誰でもある事だ、好きな人がふと距離途絶えて女や男に行くのと…

だからって殺す事は無かったはず、そう仲間に何度も言われた。
わかっていたさ、殺すつもりなんてない
だけどそうしないと苛立ちがほかに向きそうだったんだ。


血の雨が降る中、俺と帽子屋はアリスの死体を見ていた。
何も喋らない帽子屋を覗くように見るつもりもなく、ただ俯いて時を待った
風化してほしかった、早く…早く。

だけど、この国に来たアリスは皆の記憶の中にある
だから、早々には忘れない…それが辛かった
一生皆に嫌われなきゃいけないんだから…