ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……

「黒川さん、これです、こないだお話した絵」


あたしはマンションに着くなり、よっこらしょ、と絵を机に持ち上げた。

大きいから持ち歩くのが結構大変。


大好きな季節、「秋」をテーマに描いた絵。

これは実は、中3のとき全国美術展で銅賞を取った作品だったりする。

授業でたまたま描いた水彩だけど、これがコンクールに出展されて、あれよあれよという間に全国へ行って。

最終的には新聞の日曜版にカラーで大きく掲載された。


それ以前はあたしが絵を描くことに「何の役に立つの」なんていい顔をしなかったママも、それを機に急に乗り気になって、美大だの何だの言い出したんだった。


ただの『無駄に絵を描き散らすのが好きな柚希』が『全国美術展銅賞の柚希』に変わった絵。


「ああ」


黒川さんは、形のよい顎に手を当てて、じっと絵を見る。

しばらくして、うれしそうに微笑んで、数回軽くうなずいた。