ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……

そういえば――

黒川さんのそぶりが、ときどきまるで恋人みたいな仕草だと感じてどぎまぎすることがよくあった。

そっと背中を押したり、肩を抱いたり。

あたしの筆を持つ手に重ねる手に、必要以上の愛情を感じてた。


――あれは、レイさんと錯覚していたの?



あの、椅子に座るあたしの絵。

あの顔が、秋月レイさんの遺影に見えた。

自分が死んだように思えて背筋が凍ったあの感覚。


黒川さんの目に異様なものが宿るようになったのは、いつだっけ。

そうだ。あたしが小さな反抗をしてから。

モデルは無理、そんなこと言ってない。なんて、そんな小さな反抗。

そのあと逃げ出してから、脅すようになった。


――あれは、黒川さんには”裏切り”だったの?

黒川さんの中では、自分を裏切ったレイさんと重ね合わせてるの?



(君は僕から逃げられないんだから)


あんな写真をネタにあたしを脅したりして。

レイさんが自分の前から消えてしまったから、その代わりにあたしを檻の中に閉じ込めようとしているの?