ゴースト ――あたしの中の、良からぬ……

――他人の不幸は蜜の味。

そんな言葉がぴったりだって、当時のあたしも思ったっけ。


「秋月レイはね、真面目一辺倒な兄貴が本気で愛したただ一人の女性だったんだ。

だから、さ。

彼女が他の俳優の家に泊まって、朝帰るところを事故に遭ってそのまま帰らぬ人に、なんてことは、兄貴にはちょっと立ち直れないくらいの打撃だったんだ」

「……」


今やあたしは、息をすることも忘れて聞き入っていた。


(そんなことがあったら、誰だってそうなるよ……)


愛する人が死ぬだけでも、普通はなかなか立ち直れないだろうから。


(もし、薫さんがいなくなってしまったら――)


そんなことが頭をかすめる。

でも、あたしにはそんなこと、いまひとつイメージできなかった。

いつでもこのベンチにいる、ベンチの主みたいな人だし。


そんなあたしをよそに、薫さんの声は続く。