俺は、手紙で泣いたことなんか過去を振り返っても一度もない。
映画をみてもアニメを見ても、ドラマや小説、音楽を聴いたって泣いたことはなかった。
なのに、この手紙で泣いてる俺は少しおかしかった。

「馬鹿だな、俺は・・。なんで手紙でなくんだよ。」

手紙を胸に押しあてて、わんわん泣いた。
どこかの誰かが言ってたっけ・・『泣いてるうちに涙は枯れる』って。
あれは、きっと俺を除いてのことだったんだな・・。

神様はひどいことを平気でする、と初めて神様という存在を肯定した上で神様を呪った。
どんなに泣いても喚いてもさくらは帰ってこない。
どれだけ苦しかっただろうか、どれだけ痛かっただろうか。
超えられる壁しか与えないなんて嘘だと俺は泣いた。

「俺は・・そんなに強くねーんだよ・・」

その場に崩れ落ちるように泣きじゃくる俺は小さい子供のように見えているんだろうが、俺にはそんなのどうでもよかった。
さくらがいないんだったらそんなの気にしても意味がない。

俺は、さくらの手紙に書いてある二行を訂正した。
空を見上げて、さくらに向かって。

「馬鹿だな、さくら。俺はまだ愛してる。」

精一杯の言葉だった。
笑わなきゃと思った。
涙や鼻水でぐしゃぐしゃの顔で笑顔を作った。
引きつっていたかもしれないけど、俺はさくらに泣き顔のまま話しかけたくなかったのだ。

空はいつものように青かった。