彼は私の後を追いかけてきた。

「まてったら!」
「嫌!来ないでよ!」
「誤解だよ!あれは俺の妹だ!」

妹・・?
何のために・・?

「なんで妹とあんなところへ行くのよ!」
「指輪を決めてたんだよ!」
「妹とはめるつもりでいたの!?」
「そんなわけねーだろ!俺は、さくらとはめたかったんだよ!だから前に聞いたろ!」

前に・・?
ああ、リングサイズのことかな?
確かに聞かれた。
でも、大した話題でもなかった。

「そんなんじゃわからないわよ!」
「指輪のサイズはわかっても女の子がどれを好むかわからない。でも内緒にしておいてあとでびっくりさせたかったんだ。きっと驚いて喜んでくれると思ったから。」

そんなわけないじゃない。
こんなに不安だったっていうのに。

「本当に妹だっていうなら優輝のことを呼び捨てで読んだり、あんなに馴れ馴れしくしないでしょ!?」

確かに、私はあの時聞いたんだ。

『優輝・・・から・・けんなしっ!』

どう考えてもあれは恋人同士の喧嘩だった。

「え?俺の妹は俺のことは優輝なんて呼ばないよ。あいつは俺を愚兄って呼ぶから。」
「でも聞いちゃったもの!優輝・・から・・けんなしっ!ってとぎれとぎれだけど聞こえてたよ!」

そこまでいうと、優輝は笑い出した。

「あはははっ!!ごめん、あれは違うよ。」
「どういうことよ。」
「あれはね、優輝って俺のことじゃない。俺が、彼女と来ないことをあいつが不審に思ったのさ。それで、「彼女と来れないのはなんで?」って聞かれて「ドッキリで渡したいから」っていったんだよ。そしたらあいつが「言い訳はいいですから。勇気がないからでしょ。私を休日に連れ回すなんていい度胸だよね。ふざけんなしってとこよ。あとでクレープおごってよね。」って言われてたんだよ。」

そこまで聞いて私は誤解していたことにやっと気がついた。