「それで“ヒナ”って・・・」


「呼び名がないと不便だからな。今は何とか普通に学校に通えるようになったけど、まだピアノとか合唱とか楽譜にはトラウマがあるみたいなんだ」



3年経った今でも、雛月が負った傷は癒えていない。


雛月はあの日から一歩も前に進めずにいるんだ。


風沢の苦労も報われないまま。


「風沢、ちょっと頼みがあるんだけど」


一度崩れたものは元には戻せない。


だったらいっそのこと粉々になるまで壊してしまおう。

そう思ったんだ。