「あんた、雛月のフルネーム知ってる?」


桐野は気まずそうに視線をそらした。
分かりやすい奴。
その反応は“知らない”ってことだろ?



「ごめんね、知らないの。何か事情があるみたいで一度も聞いたことないから。学校では“ヒナ”ってことになってるけど、本当の名前は誰も知らないんじゃないかな」


「事情?」


「それもよく分からないけど・・・」


ほら、しっかり壁作られてんじゃん。
そんなのが友達ねぇ・・・。


「ヒナって呼び方はあんたが考えたのか?」