side広夜


“風”には気を付けろ。

雛月が残した意味深な言葉がずっと引っかかっている。
あいつは、“俺が嫌いな類の人間”とも言っていた。

“風”の正体がどんな奴であろうと、関わるつもりなんてないけど。



それに、気になることはもう1つ。

雛月はなぜかフルネームを名乗らない。

何が理由があるのだとしても、クラスの誰かに聞けばすぐ分かるんじゃないのか?
だったら、隠しても意味ないのに。



「わけ分かんねぇ」


気にならないと言えば嘘になる。
だけど、厄介事は避けたい。
今ならまだ間に合うんだ。


もう関わらない。
“風”にも、雛月にも。
そう誓って、教室のドアに手をかけた。