向手瑞紀は第一志望校の試験日にインフルエンザなってしまい不本意ながら滑り止めで受験した北条女子高等学校に入学したのだった。

第一志望をあきらめざるを得ない状況になり沈み気味だった気持ちを落ち着かせる為に、瑞紀は一度、大きな深呼吸をしてから呟いた。
「まぁ、北条は道場にも近いから良しとしよう」

向手瑞紀は小学校から空手道場に通っていて現在、茶帯1級の武道少女であり、高校入試よりも秋に受ける黒帯昇段試験の方がどちらかといえば気掛かりだった。

159センチで痩せ型の華奢な体型の瑞紀は空手をやっていると言うと大抵驚かれた。
ほとんど毎日、道場に通っているのでそれなりに筋肉も付いているのだが着痩せするタイプなのでぱっと見ではまず空手少女には見えないし少し長めのサラサラなショートヘアに色白の端正な顔立ちで更にシルバーフレームの眼鏡をかけているので同年代の女子にありがちな雰囲気はなく、昔からどこか大人びたクールな子供であった。

その性格も見た目と同様にクールでいつも冷静沈着、熱くなる事はほとんどなく、今まで本気でキレたのは小学校の時に一度だけだった。