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「そっからは正直、あんま覚えてない。」
透も、こんな顔するんだね。
そんな泣きそうな顔、初めて見たよ。
「けどな、水を飲もうと冷蔵庫を開けた時にな、見つけてん。
母さんが用意してくれとったホールのケーキ。
それだけは、ハッキリと覚えてんねん。」
透の声が微かに震えている。
「その日は、クリスマスイヴやったからな。
体調悪いのに無理して…アホやで、ほんま。
その日の事を思い出すから、俺は今でもケーキもクリスマスも嫌いや。」
胸がつぶれそうに痛い。
いつかの昼休み。
ケーキが嫌いだと言った彼の言葉の奥に、こんな理由があったなんて…思いもしなかった。
「葬儀が終わった後、澄佳さん…母さん側のばあちゃんに引き取られて、コッチに来たんやけど、さすがに『しっかりせな』と思ってな。」
透が苦笑いを浮かべた。
「いつの間にか、自分を偽るようになっとった。」
思い知らされた。
私は透のこと、何にもわかってなかったんだ。
ううん、今でもわかんない。
彼の心の闇も、弱さも
今ようやく、顔を出しただけ。
これからも、
私には彼の気持ちを計る事なんて、出来ないのかもしれない。
こんなんで…
私、そばにいてもいいの?

