繁華街から外れた、その街を思い出そうとすると、 古びた商店街。 工場に囲まれた風景。 木造二階建ての平屋。 思い浮かぶのは、 そんなうす暗い記憶ばかりだと 彼は言った。 「母さんはもともと丈夫な方やなくてな。 それに加えて、工場経営がうまくいかんくなってもうてん。」 淡々と話す透が、 何だか、違う人に見えてくる。 「借金取りは来るわ、旦那は酒飲んで暴れるわで… …疲れてもうたんやろな。」 もう、いいよ。 そう言いたいのに、 言葉が出ない。 そんな自分が 歯がゆくて、たまらない。