「……俺な、」
長い沈黙の後、
ぽつりと、呟いた透を
私はじっと見つめた。
彼の見せるサインを、もう何ひとつ見逃したくはない。
「俺…中学あがるまで大阪に住んでてん。
普通に両親と3人で暮らしてた。」
そう話す声は、いつもより乾いた声をしている。
「家は小さい工場経営しとってな、小遣いも少ないし、今みたいな暮らしとは全然違うかったけど…」
けど…。
その先の言葉を口にするのが嫌なのか、顔を歪めた。
「…まぁ、とにかくそんな生活も…小6の冬やったかな。
…終わったんや。」
変わったのではなく、
“終わった。”
それは、何を意味するのだろうか。