シュガーレス



トントン、と階段を上ってきた小泉は、俺よりも上の段まで来て足を止めた。


「答えは言わんでも、わかるよな?」


初めてコイツを見上げる形になり、視線がかち合った。


「こっわー、そんな睨まんとってぇや!」


ふふふ、と含み笑いをしながら、再び階段を上って行く小泉。


「お前、どうゆうつもりだよ?」


思わず呼び止めた。


「ん?」


振り向いた小泉の髪が、日光を浴びて飴色に輝く。


「美里の事、どうゆうつもりなんだ?」


「どうゆう…って、別に?」


「…好きなのか?」


“これ”がコイツの本性だとしたら、俺にそれを見せるメリットって何だ?


そこまで美里に、執着があるって事なんじゃねーの?


だけど俺の予想は一蹴された。


「まさか。
ドラマの見過ぎやろ?」



と鼻で笑うと、俺の顔を覗き込んだ。


その茶色の瞳は、びっくりするくらい冷めている。


「好きとか、嫌いとかしょーもない。

俺は別にどうゆうつもりでもないし。何かおもろいヤツやし、何かに使えるかなーって思っただけ。」


不意に、コイツの事を話す時の美里を思い出し、胸が痛んだ。


「まぁ、三河が藍川さんの事好きなんやったら流石に悪いし、返すけど?」


ここで、


コイツを殴り飛ばして、美里が好きだって言えたら、どんなにいいだろう。


だけど実際には行動に移せない自分に、嫌気がさした。


「…………。」


「…ふーん?
ほんなら、好きにさしてもらうけど。」


黙り込んだ俺を見て、不思議そうな表情を浮かべた小泉が、軽い足取りで階段を上って行く。



「ほんなら、これからはお互い干渉せんってゆう事で☆」


まるで仲の良い友達かのように、愛想良く手を振っている姿は、もう“いつもの小泉”だった。