『百合』
そう呟いた先生の声が、頭に響く。
信号待ちの時に『可愛いワンピースだな』と思った人。
先生が花言葉を知りたかった“百合”は、あの人の事だったんだ。
それなのに、浮かれたりしてバカみたい。
栗色のゆる巻きヘア。
小柄で華奢な身体。
そして、何よりも
先生の隣にいても何の違和感も無い、年相応の落ち着いた雰囲気。
私はその内の何ひとつも、持ち合わせていない。
“先生を、どうやって振り向かせるか”
さっきからずっと考えているのに、彼女との共通点が見つからない現実が、それは不可能だと言っているような気がした。
胸が痛くて、うまく呼吸が出来ない。
こんな調子で、次に先生に会った時、ちゃんと笑えるかな。
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『笑わせないで。』
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あぁ…、本当にコンディションが悪い。
思い出したくない事まで、思い出してしまった。
「坂本さんっ!」

