「お兄サマもオジサマも、お姉サマも奥サマも、あ、もちろん小さいお子サマも、みなさん今日はあたしたちちりめんじゃこのこと、バッチリ覚えて帰ってくださいねー」


「明里!明里のお兄様は俺だけで充分だよ!むしろ俺をお兄様と呼んで!」



「ぜってぇ呼ばない。お前はポンコツで充分だこのポンコツ」



「劇的に口が悪いよ明里さん!ぜってぇとか言っちゃダメでしょ?」


「絶対にあなたのことをお兄様と呼ぶことはございませんので諦めてくださいませこのポンコツ野郎」


「最後ので台無しだよ!」


「うるせぇな。というか次の演目移らなきゃじゃん。こんな無駄話してる暇ないじゃん」



完全にMCとしての仕事を忘れていた。

これはさぞかし舞台裏があたふたしているだろう。


と思って舞台袖を見てみると、なにやらにこやかなみなさんとゆるキャラが待機している。

これはあの着ぐるみをこちらに呼べばいいんだろうか。



「でも次のプログラムって、俺たちの出番じゃなかったっけ?」


「…そういえばそうでした。じゃあ、とりあえずあそこで暇そうにしてるネコさんをお呼びしますか。ネコさんこっちにいらっしゃいな」



舞台袖に手を向けて来い来いとジェスチャーすると、待っていたのかスケッチブックをもったゆるキャラ「ネコさん」が舞台の中央、あたしたちの元へとやってきた。


ちなみに、ネコさんとはこのゆるキャラの名前である。

もちろんその姿は可愛いようなそうでもないような猫の形で、何のひねりもないネーミングに、名付け親の顔をぜひ拝んで見たいと初めて見た時に思ったが、今回はそのくだりは無しにしてあげよう。