いつも通り卒なく役をこなして、クライマックス。



町のお客さんが結構入っていて、家族も友達も呼んで、自分の役を見せたくて、大きなステージは楽しくて気持ちよくて。


一番大切なシーンに差し掛かった時。




何度も練習した、慎太郎と呼吸ばっちりで完璧だったはずのセリフが、




頭の中から消えちゃった。




あたしのセリフがないと次へ進めない。

でも、なんていえばいいかわからない。


みんながあたしを見てた。

みんなみんな。


そしてあたしは何も見えなくなった。




真っ白になった頭の片隅で、慎太郎の声が響いた。

その一言で止まっていたステージがまた動き出して、ただ呆然と、慎太郎ってすげーなって思ったのを覚えている。




その舞台があったのがあたしが中1、慎太郎が中2の秋のこと。




ちょうど今から3年前ってとこか。




その舞台を最後にあたしと慎太郎は劇団をやめて、それまでの生活に戻った。


そしてあたしは、人前に出ることを恐れるようになったんだ。