「え、明里くん劇団入ってたの?!」
「……小さいころ、少しだけですけどね。」
先輩がテンション高めで聞いてくるのをみて、誤魔化すのはあきらめた。
できれば知られたくなかったことなんだけど、…慎太郎め、なんで言っちゃうんだよ。
知ってんだろうが、その話があたしにとって地雷だってこと。
だからお前はポンコツなんだよ。
だからお前は嫌なんだよ。
平気な顔して地雷踏んでくんじゃねぇよ。
「…明里くん?」
急に下を向いて動かなくなったあたしに、先輩が心配そうに話しかけてくる。
ごめん二階堂先輩。
あたし今、うまく反応できないんだ。
「明里、いつまでもそうやって、後ろばっかり見てちゃダメだよ。」
頭の上に優しい手のひらの感触。
いつだってこいつはこうしてあたしを甘やかそうとする。
「先輩、俺らね、明里が小6で俺が中1のころ、小さい劇団に入ってたんです。明里がやりたいって言って」
「慎太郎…!」
「大丈夫だよ。先輩にちゃんと聞いてもらおう?」
これは少しだけ昔のお話。
あたしと慎太郎、二人だけの秘密のお話。

