『あ…あぁ…いや、慣れてないんだ。』
と、彼が言った。
『何に?』
『人と話す事も、人にギターを聴かせる事も…』
と呟いた。
彼の涼しそうな表情は崩れ、
透明な程白い綺麗な顔色が鮮やかに桃色に染まっていった。
『人と話すの、得意じゃないんですか?』
と、もしかしたら自分と似ているかもしれないと
同じ人種を見つけたかのような淡い期待をこめて問いかけた。
『あんまり、ね。』
と言うと、軽々しく床に寝そべっていたギターが彼の右手によって起き上がり、
彼の膝に位置を移した。
彼の左手は弦を押さえ、右手にはポケットから取り出した涙のような形のものが、弦に触れようとしている。
また、生温い風が吹いた。
