向こうの家からお母さんらしき人が出てきました。インドサリーのよく
似合う若いお母さんです。中に入れと手招きしています。少女は僕の手

を掴んで引っ張りました。お母さんもにっこり笑ってアチャと首を傾げ
ています。ナマステと言って館の中に入ると、ベッドにおじいさんが横
たわっていました。枕元でおばあさんが編み物をしています。にっこり

と微笑んでくれました。閑散とした部屋にテーブルがひとつ、少女が座
れと合図をします。座ると少女はちょこんと僕の横に座って何かを待っ
ています。やはりミルクティーのチャイとお菓子が運ばれてきました。

少女はとてもうれしそうに僕を見上げます。お母さんの話では、この先
何年でもおじいさんが亡くなるまでここに居るそうです。しごく当然の
ように本人も家族もそれが一番幸せなのだと言ってました。

ガンガには不思議に人の心を癒す魅力があります。ヒマラヤからの
大自然懐に抱かれて、母なるガンガでは安らかに死を迎えることができる、
ベナレスはそんな不思議な聖地でした・・・・・・」