鼓動と衝撃音が大きくなり少し早まる。

(杏子のN)「12月に入りました。きっと手紙が来ます。
絶対来ます!私は直感で分かるのです。えいっと指を鳴らすと
ポストに手紙が入って輝いているんですよ」

鼓動と衝撃音さらに早まる。

(杏子のN)「手紙はまだでしょうか?間違って京都に
送ったのでは?広島の住所は知ってるはずなのに」

鼓動と衝撃音急激に高まる。

(杏子のN)「もうだめ!私死ぬ。手紙はまだですか?
必ず来ます。絶対来る!父に噛み付きました」

鼓動と衝撃音、最高に達する。

(杏子のN)「ああ、もうだめ。何がなんだか分からない。
手紙来てるはずよ!お父さん見てきて!」

鼓動と衝撃音ぴたりと止む。
遠くから駆ける足音が近づいてくる。
声が近づく。

(父)「(大声で)杏子!若林さんからの手紙が来てたぞ!」
手紙を開ける音。
(父)「ほら、若林さんからの航空便だ!」

(若林のN)「父に支えられ必死に起き上がる杏子。もう視点が定まらない。
手に持とうとするが持ちきれない。父、しっかりと封筒を杏子の手に握らせ、
手紙を読み始める。杏子は無表情で耳を傾けている」