ブザーの音。あわただしい足音。
(婦長)「柴山さん発作。モルヒネ用意して」
(看護婦)「はい」
(婦長)「先生は?」
(看護婦)「すぐ来られます」

駆ける足音。ドアを開ける音。
ベッドのきしむ音。
(杏子)「痛い痛いとても背中が痛い。助けて若林さん!
助けて!何も悪いことしてないのに。なにも・・ああ、痛い痛い」

(医師)「そっち抑えて。もっと強く。そう、そのまま。モルヒネ!」
(婦長)「はい!」
(医師)「少しレベルを上げよう」
ベッドの音静まっていく。
(医師)「もう、かなりきびしいな」
足音が遠のいていく。

(杏子のN)「私は絶対若林さんのことが好き。退院したら
結婚して欲しい。早く帰ってきて。プロポーズしてあげるから」

(若林のN)「この頃から発作が頻繁に起き、モルヒネの量が
増えて、杏子は狂おしくなってきた」

(杏子のN)「きょうは私達家族でピクニックに行ってる夢を見
ました。小学生の子どもが二人、もちろん登町小学校の生徒ですよ」

ブザーの音。
(婦長)「柴山さん発作!」
駆け足音が遠のいていく。