デーテの家に着くと、私はそーっと玄関のドアを開けた。
誰もいない事を確認し、中へ入ると…。
突然玄関の照明がついた。

「亜夕ちゃん、こんな時間にどこへ行ってたの!」

「ごめんなさい…。」

その瞬間、またいつもの幻覚が現れた。

小学生の頃の私が、門限の時間を数分過ぎてから帰宅すると…。

「ただいま。」

「はっ?あんた誰?うちには時間を守らない最低な人間はいないはずだけど。」

「ごめんなさい…。悠太と遊んでて…。」

「悠太悠太って…。あそこの家はお金持ちだし余裕があっていいわよね。ほんと嫌味ったらしい。もうあんた悠太君ちの子になりなさいよ。」

「はい。」

「はい?ふざけてんの?あんたみたいな落ち着きのない子供をここまで育てたの誰だと思ってんのよ!」

そう言って母は私の頬をビンタした。
赤く腫れ上がった頬を見て、母はこう言った。

「そんなほっぺで学校行ったら私が叩いたと思われるから明日は学校休みなさい。」

私の中で何かが弾けた。
幻覚だと知りながらも私は夢中で叫んだ。

「ふざけんな!自分で叩いたくせに!謝れ!叩いた事を謝れ!」