「…。私と雨音は、実の両親に殺されたんだ。まだ宿ったばかりの私達は、望まれていなかった、ただそれだけの理由である日突然引きずり出された。ここへ来た時、私達はある相談をした。価値観を平等に分け合う事は不可能だ。そこで、喜怒哀楽を半分ずつ分け合おう、そう決めたんだ。私は喜と哀 、雨音は怒と楽で成立し、存在する。だから私達は正反対のように見えて、一心同体だ。雨音は今でも両親に対する怒りと共に生きている。私は両親の心境を理解した故に、必要とされなかった事に対しての哀しみと共に生きている。亜夕が冷静に母親の事を理解した瞬間、怒りと引き換えに哀しみがつきまとうだろう。どちらにしても、辛い事に変わりはない。誰も救ってくれないのなら、強くなれ。強くなるんだ。」

陽咲はきっと、すごく辛くて苦しかっただろう。
それを乗り越えて、今の陽咲がここにいる。

「ありがとう。私、陽咲に会えて…」

私がそう言いかけた時、突然彼女は現れた。

「陽咲、そういう事は私の仕事でしょ?」

「デーテ!どうしてここに?」

私の想像していたデーテは、小綺麗な中年のおばさんだった。
けれど、今私の目の前にいるデーテは私の想像より遥かに若く、ウェーブのかかった長い髪を耳にかけたとても美しい女性だ。

「亜夕ちゃんを引き取りに来たのよ。さあ、いらっしゃい。今日からあなたは私の子供。」