「おいで。」

そう言うと陽咲は強引に私の腕を掴み、階段を一気に駆け上った。

「どうして…どうして優しくするの。」

私は息を切らし地面に崩れ落ち、自分が投げ掛けた問いの答えを求めもがく。

「ほらね、夕陽が綺麗でしょ。」

その景色は、あの日見た夕焼けそのものだった。
あの日私は、確かに思った。
それは無意識で私が望んだ事。
ずっとずっと息苦しくて、喉に何かがつっかえているような人生だった。
ママに支配されたまま大人になるくらいなら、私は全てを諦め、自分その物を終わらせよう。
あの時確かにそう思ってしまったの…。

「亜夕が恐れているものって、なに?」

「…ママ。」

「そっか。この街には親を憎んでる人がいっぱいいるよ。昔の私もその中の一人だった。」

「陽咲が?」

「あぁ。今はもう親の気持ちを少しは理解したつもりだけどね。」

「…私には理解出来ない。」