陽咲はとても楽しそうだった。
その姿は幼い頃の悠太にどこか似ているような気がした。
私と過ごす時間をこんなに楽しんでくれる人なんてとても珍しくて、嬉しい気持ちでいっぱいになった。
けれど素直じゃない私はそれを必死で隠す。

朝屋を出るなり陽咲は私の手を引き歩き出す。

「どこに行くの?」

「すごく寒いとこ。」

「えー、嫌だー。」

「いいから黙って着いて来なさい。」

私達は街から離れ松林の中をどんどん進んで行く。
すると、どこからともなく塩の香りがしてきた。

「わかった、海ね。」

「当たり!よくわかったね。」

松林を抜けると、広い砂浜に高い波が打ち付ける。

「海、荒れてるね。」

「秋だからね。座ろうか。」

私達は砂浜に座り込んだ。
そしてしばらく沈黙が続いた。
陽咲の顔を見ると、どこか切ない表情で海を眺めている。
すると突然陽咲が口を開いた。