「ようこそ、東雲へ。」

「しののめ?」

聞いた事のない地名だ。
私はそんな遠くまで来てしまったのだろうか。

「私の名前は陽咲(ひさき)。」

「…。」

「よろしく。亜夕。」

陽咲は私に跪いた。

「あなた、誰なんですか?ここはどこなんですか?なんで私の名前知ってるんですか?」

「ここは君が向かった先さ。私は君の事を随分前から知っている。さあ、行こう!」

「はぁ…。」

陽咲という男は随分強引だ。
私は言われるがまま彼に付いて行く。
よく見るとこの街は私が見た事のない異国のような雰囲気を醸し出していて、陽咲はとても変わった風貌をしている。
瞳は青く、髪は白髪に近い金色。
真っ白のタキシードを着た優しそうな青年だ。
辺りを見渡すと、日本とは思えない洋風な街並みに私は驚きを隠せない。
陽咲について行くと、洋風な街並みには合わない二階建ての古びた旅館のような建物に辿り着く。

「デーテに引き取ってもらうまで、ここが亜夕の部屋だよ。」

「えっ、デーテって?引き取ってもらう?なんの事?」

「まあ時間はまだまだあるから。今日はもうお休み。明日この街を案内しよう。」

「はっ、はぁ…。」

「おやすみ、亜夕。」

陽咲は優しい笑みを浮かべ、どこか名残惜しいような表情で部屋を出た。