春奈の部屋の前に立ったら、なぜだかすごく緊張してきた。 俺は小さく深呼吸をしてインターホンを鳴らした。 中からは目を真っ赤にした春奈が出てきた。 『やっぱり泣いたんだ・・・』 春奈はいつも通りの明るさで俺を迎えてくれた。 「貴ちゃん、いらっしゃい。もうビックリしたよぉ」 春奈はすごくおしゃべりになった。 この頃になると、春奈の癖がだいたい分かるようになった。 春奈が泣くのを我慢している時は、必ずいつもの倍以上話すのだ。 一生懸命に話題を作っている気がした。