春奈の家は俺の家からほど近い高級マンションに住んでいた。


「でけぇ~」


「あんまり、嬉しくないけどね・・・」


俺はその時、普通のマンションに住んでいたのだが、春奈の住んでいたマンションはいかにもお金持ちが住むような高層マンションだった。



首が痛くなるほどの見上げる高さだった。


「なんでだ?大きいのにこしたことはないだろ?」



「1人だから、広すぎてときどき淋しくなっちゃうの」



春奈は少し照れたように笑った。



ずっと1人だった春奈には嬉しくない大きさだった。



「それもそうか・・・」


「じゃぁ、今日はありがとう。最高の誕生日だった」


そう言って、春奈は車から降りた。


俺は窓を下ろし、少し身を乗り出した。



「じゃぁなっ!」



俺はそう言って、車を出した。



バックミラーを見ると春奈が可愛く手を振っていた。



俺は幸せだった。



でも、その近くで目を光らせていた奴がいたのを俺は知りもしないで、幸せに浸っていた。





後日、俺は春奈を家の前まで送ったことを後悔するなんて知る由もなかった。