慧を部屋に案内し少しの雑談の後、部屋から出て行ったライトは足早に老師のいる部屋へと向かった。
そして老師のいる部屋の前に到着しドアをノックした。

ーコンコンー

「老師様、ライトです。」

一言ドアの前でライトが言うと中から「入りなさい。」と老師様が言った。

「失礼いたします老師様。お話とは何でしょうか?」

「うむ…。話というのは、あの少年のことじゃ。」

「…慧のことですか?」

「あぁ、これはまだわしの憶測に過ぎんのじゃがな…。」

「なんですか?」

「あの少年はな…ライトサテラの生まれ変わりかもしれんのじゃ…。」

老師のその一言にライトは驚いた。ライトサテラとは大昔、ブラックブラットの王であるブラックティガナと互角に戦い、ブラックティガナを封印。すべての力を使い果たしたライトサテラはそこで命を落とした戦士であった。

「ま、待ってください老師様!慧は人間界に住むただの人間です!そんな彼がライトサテラであるとは…とても考えられません!」

「じゃが、あの少年はブラックブラットと話したのじゃろ?ブッラクブラットは人間には認識することもできなければ、話すこともできないんじゃよ。それはお前もわかっているじゃろライトよ。」

「それはそうですが…。たまたま偶然にという可能性も…。」

「ライトよ…。この世に偶然とはないんじゃよ。あるのは必然のみじゃ。」

ライトは何も言えなかった。彼の中で慧は人間かもしれないという考えとそうじゃないかもしれないという考えがせめぎあっていた。

「まぁもう遅い。明日また、あの少年を連れて来てくれるかの。」

「…わかりました。それでは私はこれで失礼いたします。」

老師に一礼して、ライトは老師の部屋から出て行った。老師の部屋には老師と重たい空気のみが残されたのだった。