「ありがと…ございます」
とりあえず軽く頭を下げて席につきトーストを食べ始める。それを楽しそうに見つめる相手に気づく。
「あの…顔に何かついてますか?」
じっと見られていることに気恥ずかしくなり、当たり障りない聴き方で尋ねる。
「何もついてはいませんが、見とれてました。」
ニコッと笑ってから、堂々とそんなことを言う相手。
「冗談はやめてください」
更に恥ずかしくなったので後ろを向きながら食べることにする。
「そうですか?……あと気になったんですが敬語入りませんよ?いつもはタメ口でしたから」
相手は少し残念そうにした後、にこっと笑って敬語要らないと言う。相手は敬語なのにタメ口と聞いて記憶のなくす前の自分は横暴だったのではないかと不安になりながらも食事を終える。蒼手はそれを見るとすかさずに食器を片づけ始める。相手はとことん尽くすタイプのようだ。
「あ‼いうの忘れてましたが、樹さん…僕は記憶なんて戻らなくてもずっと傍に居るので安心してくださいね」
食器を片づけながら相手は言った。俺はふと思う。どういう安心なのだろうと…。思い当たるのは2つ。1つは焦らずにゆっくり思い出せばいいと安心させるために行ってくれたという意味。2つめは…別に思い出さなくても傍に居るからという意味。普通ならこんなこと思わないのだろうが、たまに見せる表情から察すると後者もなくはない。此処は聞くべきなのだろうかと思う。
その時1つ思い出す。これは何かを言い合ってるのだろうか?
「樹さん?樹さん?大丈夫ですか?」
ずっと黙り込んでる俺を見て心配になったらしく、不安そうな顔で相手は俺の顔を覗き込んでいた。
「大丈夫だよ……ねえ、俺達って仲悪かった?」
俺は安心させるように笑ってから相手の様子を窺いながら尋ねる。
「……そんなことないですよ」
相手は一瞬戸惑った後すぐに微笑んで答える。
「っ‼」
その顔を見た瞬間全てを思い出した。
「…思い出したんですね」
相手は俺の反応を見た後寂しそうに笑った。
「……」
俺は無言で素直に頷いた。
「そうですか…最後に一つだけお願い聞いてもらってもいいですか?」
俺は多分もう別れる決心がついたのだと思い頷く。
「目をつぶってください」
お別れのキスか何かをするのだと思い目を閉じる。
唇にあたる暖かい感触と同時にとても甘い香りがする…。頭の中がグルグルする…。
「…ごめ…なさい…」
薄れ行く視界の中で最後に見たのは泣きながら謝る相手と手に持ったハンカチと机の上に置かれた液体の入った瓶だった。
俺に至らぬ点があったのは事実だ…。怒るより先に謝りたい気持ちでいっぱいになった。
蒼…ゴメンな…。
とりあえず軽く頭を下げて席につきトーストを食べ始める。それを楽しそうに見つめる相手に気づく。
「あの…顔に何かついてますか?」
じっと見られていることに気恥ずかしくなり、当たり障りない聴き方で尋ねる。
「何もついてはいませんが、見とれてました。」
ニコッと笑ってから、堂々とそんなことを言う相手。
「冗談はやめてください」
更に恥ずかしくなったので後ろを向きながら食べることにする。
「そうですか?……あと気になったんですが敬語入りませんよ?いつもはタメ口でしたから」
相手は少し残念そうにした後、にこっと笑って敬語要らないと言う。相手は敬語なのにタメ口と聞いて記憶のなくす前の自分は横暴だったのではないかと不安になりながらも食事を終える。蒼手はそれを見るとすかさずに食器を片づけ始める。相手はとことん尽くすタイプのようだ。
「あ‼いうの忘れてましたが、樹さん…僕は記憶なんて戻らなくてもずっと傍に居るので安心してくださいね」
食器を片づけながら相手は言った。俺はふと思う。どういう安心なのだろうと…。思い当たるのは2つ。1つは焦らずにゆっくり思い出せばいいと安心させるために行ってくれたという意味。2つめは…別に思い出さなくても傍に居るからという意味。普通ならこんなこと思わないのだろうが、たまに見せる表情から察すると後者もなくはない。此処は聞くべきなのだろうかと思う。
その時1つ思い出す。これは何かを言い合ってるのだろうか?
「樹さん?樹さん?大丈夫ですか?」
ずっと黙り込んでる俺を見て心配になったらしく、不安そうな顔で相手は俺の顔を覗き込んでいた。
「大丈夫だよ……ねえ、俺達って仲悪かった?」
俺は安心させるように笑ってから相手の様子を窺いながら尋ねる。
「……そんなことないですよ」
相手は一瞬戸惑った後すぐに微笑んで答える。
「っ‼」
その顔を見た瞬間全てを思い出した。
「…思い出したんですね」
相手は俺の反応を見た後寂しそうに笑った。
「……」
俺は無言で素直に頷いた。
「そうですか…最後に一つだけお願い聞いてもらってもいいですか?」
俺は多分もう別れる決心がついたのだと思い頷く。
「目をつぶってください」
お別れのキスか何かをするのだと思い目を閉じる。
唇にあたる暖かい感触と同時にとても甘い香りがする…。頭の中がグルグルする…。
「…ごめ…なさい…」
薄れ行く視界の中で最後に見たのは泣きながら謝る相手と手に持ったハンカチと机の上に置かれた液体の入った瓶だった。
俺に至らぬ点があったのは事実だ…。怒るより先に謝りたい気持ちでいっぱいになった。
蒼…ゴメンな…。


