私は特教の鍵を閉めて職員室に行った。

「喜瀬おつかれ」

「お疲れ様です」

私はいつも通り鍵を返した。

…何ですか……この違和感…

「先生…」

「あぁ、頼み事だ。転校生が来るんだが、その世話係を頼むぞ」

先生はニカッと笑い私を颯爽と帰した。

あ…傘…

「……1本も残ってなかったんだ…」

どうしよう…

─────ドンッ

「ごめんなさっ…」

見慣れない制服。

もしかして転校生ですか?

「すみませんっ!!」

転校生は謝ると走って行ってしまった。

すると後ろから私の名前を呼ぶ声がした。

「喜瀬さん!傘ないんだろ?」

俺2つ持ってるんだ、と得意げに多軌君は言った。

見透かされた…

「ありがとね!」

私は多軌君から借りた傘を握りしめ歩いた。