そこで、ヒデが鼻でにおいをかぐ。
皆もにおいをかぐ。

(カズ)「いい匂いだ」
(アキ)「ほんとにいい香り。体が深く沈んで行きそう」
(ヒデ)「重たーい。体がなまりのように重たくなってきた。
海の底に沈んでいくみたいに気持ち良い・・・・・」

マッサージで両肩を叩くような心地よい音が続く。
音が次第に大きくなる。
ヒューと穴倉に吸い込まれる音。
ドサッ、ドサッと四人が底に落ちる音。

(カズ)「(エコー)いてーっ!」
(アキ)「 (エコー)いたーい!」
(ヒデ)「(エコー)おーいてて、洞窟のような穴倉のような?」

(トラ)「シー。人の声が聞こえる。静かにして」
(ヒデ)「ほんとかよ?」
(トラ)「シーッ!」

ゆっくりと歩む音。水の雫が落ちる音。
小声が聞こえてくる。少しずつ大きくなる。
遠くの声で、

(仙人)「なりませぬ、なりませぬ。
わがままを言ってはなりませぬぞ、アキ姫」

近くの声で、
(アキ)「あき姫て私にそっくり」
(トラ)「シーッ!」

遠くの声で、
(仙人)「五百年に一度のこの機会を逃すと、次は
二千五年まで、この四人は地上をさ迷うことになりますぞ」

(アキ)「それでも姫はもう一度あのお方にお会いしたいのじゃ」
(仙人)「だだをこねてはなりませぬ!」
(アキ)「どうしても会いたいのじゃー(泣く)」
(仙人)「五百年でござりまするぞ。姫には耐えられませぬ!」
(アキ)「絶対に耐えて見せますー(泣く)」

近くの声に変わる。

(仙人)「しょうがないのう。それほどまでに言われるならば、
・・・ならば若武者三人を付けまするゆえ。和之進!」
(カズ)「ははっ!」
(仙人)「秀次郎!」
(ヒデ)「ははっ!」
(仙人)「虎之助!」
(トラ)「ははっ!」
(仙人)「五百年間、アキ姫を守り続けるのじゃぞ」
(三人)「ははっ、かしこまって候!」

(仙人)「では、この四名に、天界のコンピューターに
地上の歴史をインプットする仕事を仰せ付ける。
その間に、姫の一目ぼれした若者を探し出せればよし。
探せなくとも、2005年のこの日この場所より、
天空へ飛び立つ。よいな!」

(三人)「ははっ!」

声が遠のいていく。
(仙人)「これに間に合わなければ、四人とも永遠に地上を
さ迷うことになる。よいな!絶対に遅れることなかれ!」

(四人)「ははっ、かしこまって候!」