地主の息子でサラリーマンをしなくて済んでいる男の昼食とは自分でも思えない。自分は金持ちにむいてない―ということは六郎が一番よく知っている。

佳織さん含めた社会人は今なにしてるのか。贅沢すぎる疑問だ。確かに満員電車に乗りたいとは思わない。だが2週に一度最高級の寿司を喰う―六郎の父は美食家を自負している―ほどの収入も六郎は望まなかった。ただ食べて寝る幸せ。六郎には充分すぎた。

宙ぶらりんな、自分が所帯を持つ、可能だろうか?。そもそも佳織さんの一言は、本当にプロポーズなのだろうか?。メモ帳に昨日の一言を書いてみた。じっと見つめて考えてみたが、眺めても眺めてもあくまで、字の羅列でしかなかった。

ふと、スーパーファミコンの「マリオカート」がしたくなった。友人の良昭と熱中したゲームだ。通販サイトなら、すぐ買えたが、発送は明日になるという。明日、と言われると今すぐ欲しくなる。六郎には、そうした子供じみたところがあった。六郎は近所ブックオフに出かけた。