あたし、羽田宇美と、あいつ、赤坂蒼空の待ち合わせ場所は、いつも河原だった。

将来の夢が「自衛隊員になること」なとこや、両親が自衛隊員ってとこで共通点が多く、あたしと蒼空はいつも遊んでた。

日が暮れても、辺りが真っ暗になっても、ずぅっと、ずぅっと。

でも、別れは突然やってきた。

「オレの両親が死んで、田舎のばあちゃんちに帰ることになった」

息が止まるかとおもった。蒼空があたしの目の前から消えるなんて、信じられない。

「…泣くなよ、宇美。お願いだから」

「だっで…」

鼻水だらだらで泣きじゃくる自分は、正直言ってハズい。

でも、目と鼻からあふれてくるものは止まらず、ずっと泣き続けた。

「…宇美、聞いて」

「な”…によ…」

「宇美、オレ達二人の将来の夢、忘れた?」

あたしは首を横に振った。

忘れるはずがない。二人の、「自衛隊員になりたい」って夢。

「なら、大丈夫。それを忘れなければ、またきっと逢える。だから…泣くな」

「う、うん…」

力なく頷いたけど、あたしはあんまり意味がわからなかった。

夢を忘れなければ、また逢える、なんて…どういう意味なんだろう。

頬につたった涙を拭いながら、あたしは蒼空と別れて家路についた。

家に入り、ペットのシナモンを撫で回す。

「ねぇシナモン…また逢えるって、どういう意味なんだろうね…」


ーー翌日、蒼空は田舎のばあちゃんちに帰って行った。

「絶対自衛隊員になろうな」と笑顔で言い残して…