「これは、明日でも読める・・・私は、朝からずっと抑えておる・・・もう、待てぬ―――良いな?」


耳朶にキスをして囁きながら本を取り上げる。

抱き上げると首に腕がまわってきた。

ベッドに運び、すぐさま唇を塞ぐ。

角度を変え、何度も貪るように絡め取り口中を攻める。

次第に力が抜け、なすがままになる身体。

肌がピンク色に染まり、瞳が切なげに潤む。



「良いか、その顔を見せるのは私だけだ。約束せよ」



服を脱がし、肌に指と唇を這わせる。

先程の問いに対し、切なく掠れた声で、はい、と呟くエミリー。

熱く甘い吐息と声が私の扇情感を煽る。

抑制できずに、何度も柔らかな肌を求めた。








腕の中ですやすやと穏やかな寝息を立てるエミリー。

愛する者をこの腕に抱ける、なんて私は幸せなのであろうか。

少し前までは一生味わうことのないものだと思っていた。

君と出会ってからというもの、無色だった私の毎日に、様々な色が現れては消える。



初めての休日。

初めてのお忍び。


思えば朝からいろんなことがあった。

一つ一つ思い返せば、心和むこともあれば反省することもある。

いや、どちらかと申せば、反省することの方が多い、か。


私はまこと弱い人間だ。

これからもエミリーを困らせたり悲しませたりするかもしれぬ。

果てには、怖がらせたりも―――

だが、少しずつで良い、これから一つ一つ克服していく。

この先もっと成長し、君と、近い将来出来るであろう世継ぎを、それに国の民たちを、慈しみしっかりと守れるよう、身も心も強くならねばならぬ。




私は、アラン・ランカスター・ギディオン。


エミリーの夫であり


一人の男でもある


――――が、



私は、この国の、世継ぎの王子だ。





【完】